交通事故のむち打ち症とは
医学的には「むち打ち症」と言う病名はありません。一般的に交通事故によって起こる頚部の痛みを「むち打ち」や「むち打ち症」と言いますが、「外傷性頚部症候群」を「むち打ち症」と理解されている事が多いようです。
この「外傷性頚部症候群(むち打ち症)」は各病態により大きく分けて6つの型に分類する事ができます。
追突された衝撃により、頚椎(首)・胸椎(背部)・腰椎に外力が加わり、その関節が持つ運動範囲以上の動きを強制されることで、筋肉や靭帯、関節包などを損傷した状態です。強制の程度によりますが、重篤な場合は骨折や脱臼などを起こす場合もあります。
追突事故などの衝撃で、頚椎(首の骨)が過度の屈曲後、過度に伸展する「むち」のような動きを強制されることによって発生する、頚椎捻挫の総称です。
それにより、頚部の痛みや頭痛・肩こり・手のしびれ・顎関節の障害・首や肩の運動制限など様々な症状を引き起こします。
多くは、後方からの衝撃により頭(後頭骨)を支えている第一頚椎に損傷をうけます。それにより、後頭骨と第一頚椎を繋いでいる筋肉(後頭下筋群)に障害がおき、後頭骨と第一頚椎の間の関節にズレが生じ、それにより頚椎の生理的弯曲である前弯カーブが減少し、ミリタリーネックというむちうち症特有の症状が出現します。
また、後方からの衝突による振り戻しによって、頚部の前面部の筋肉が収縮してミリタリーネックを助長します。
なかなか症状が回復しない場合などは、脊髄を覆ってる脊髄硬膜に異常を起こしているケースが多く見受けられます。衝撃の強さや個人の体質・年齢の違いなどでも治癒にかかる期間に差が出ます。
外傷性頚部症候群(むち打ち)の種類
頚椎捻転型
頚椎捻転は最も軽い損傷で、頸の付け根から肩にかけて付いている筋肉や靭帯などの軟部組織が、一時的に引き伸ばされただけで、自然に元の正常な状態に戻っているものを言います。数日間痛みは続くものの完治するのに長期間かかる事は稀で、その多くが後に問題になる事は少ない損傷です。
軽度の頸、肩、背中の痛みやこり
頚椎捻挫型
むち打ち症と診断されるものの7〜8割程度がこの頚椎捻挫型と考えられています。頚部を支える筋肉(胸鎖乳突筋・板状筋群・僧帽筋など)や靭帯、関節包の断裂など軟部組織の損傷が起こっている状態です。
通常、損傷を受けた軟部組織そのものは8~10週間程度で軽快してくるものの頭痛・違和感などにしばらく悩まされることが多いようです。
頚部(首)を動かした時の痛み、首や肩の動きが制限される。
後頭部や首・肩・背中の痛み、こり、頭痛やめまいなど
頚椎神経根型
脊髄から出ている頚部の神経が、追突などの外力により引き伸ばされたり、圧迫を受ける事により起こります。
障害を受けた神経の支配下にある部分の知覚障害・しびれ・麻痺・筋力の低下・反射の異常などが起こると言われています。
バレリュー症候群
頚椎を通っている交感神経を痛めた事による症状名。交感神経は副交感神経と共に働き、自分の意思とは関係なく生体のホメオスタシス(恒常性)を維持して生体の状態を一定に保つ働きをする神経です。
頚部の交感神経は頚椎の中を走る椎骨動脈や頚動脈に、神経を絡ませて血流の調節に参加したり眼や耳、心臓の機能にも働きかけている神経です。この神経がむち打ち症などの外力により損傷を起こすと働きが鈍くなり、バランスを崩す事によって起こる症状は多岐にわたります。
耳鳴り、難聴、目まい、吐き気、眼精疲労、不眠、全身の倦怠感、疲労感、食欲不振、頭痛、集中力の低下などが起こると言われています。
頸髄症
頚椎の骨折や脱臼により脊髄そのものが損傷され、手や足の症状、膀胱障害などが起こります。
上肢のしびれ、歩行障害、膀胱障害、直腸障害などが起こると言われています。
脳脊髄液減少症(低脊髄圧症候群)
上記に該当せず、または半年以上症状が改善されない場合など脳脊髄液減少症の疑いがあります。むち打ち症の場合は一時的に脳脊髄液圧が急上昇し、圧が津波のように下方に伝わって、腰椎の神経根に最も強い圧力がかかり、くも膜が裂ける事によって起こると言われています。
特徴として症状が天候や気圧に影響されたり、身体を起こしていると症状が悪化し、横になると軽快する傾向があり、脱水でも症状が悪化する事が頻繁に見受けられます。
※脳脊髄液とは・・・側脳室、第3脳室、第4脳室の脈絡叢という血管から作られ、くも膜下腔を循環していて、神経に栄養を与えたり脳や脊髄を衝撃から守る役割を行っています。
- 痛み・・・起立性頭痛、頚部痛、背部痛、腰痛、手足の痛みなど。頸・肩・背中の筋肉がとても硬くなる。
- 脳神経症状・・・耳鳴り、目まい、聴覚障害、視力低下、味覚、嗅覚異常など
- 自律神経障害・・・迷走神経の機能異常による胃食道逆流症、頑固な便秘が多く見られる。微熱、動悸、呼吸困難、頻尿など
- 高次脳機能障害・・・記憶力の低下、物忘れ、思考力・集中力の低下
- その他・・・睡眠障害、免疫力低下、極度の疲労感、内分泌機能異常など
以上のように一口で「むち打ち症」と言いましても、症状や病態により様々です。当然、衝撃の程度や交通事故の発生を予見したか等により、ケガの程度や症状は異なります。
したがって、むち打ち治療の方法や、治療期間なども必然的に違ってきます。
早期の回復には、様々な検査方法を用いて、正確に症状を把握することが大切です。それを十分踏まえた上での、個々に合わせた最適なむち打ち治療をフジタ整骨院・鍼灸マッサージでは施します。それにより早期回復が実現できるのです。