鍼灸院や整骨院での施術が、医療費控除の対象となると耳にしたことがある人もいると思います。
今回は、医療費控除について解説し、鍼灸院や整骨院での施術が医療費控除の対象になるのか、医療費控除を受けるにはどうすれば良いのかをご紹介します。
なるべく正確に説明していますが、税務署の説明が一番だと思いますので宜しくお願い致します

 

☆そもそも医療費控除とは何だろう?仕組みを知ろう☆

確定申告では、収入から必要経費を差し引き、さらに各種控除を差し引いて、実際の利益=所得を算出します。

この各種控除を漏れなく申告することが節税に大きな効果をもたらすわけですが、その中の一つが『医療費控除』です。

医療費控除とは、カンタンにいえば「年間に医療費をたくさん支払った人は大変だったでしょうから所得税を安くしましょう」という制度。

その年の1月1日から12月31日までの間に、同じ生計の家族が支払った医療費が10万円を超えた場合、超過分が収入から控除される仕組みになっています。

よく「年間の医療費が10万円を超えたら超過分の金額が返ってくる」と勘違いしている人がいますが、おそらく高額医療費制度と混同しているのでしょう。

医療費控除は、収入額から控除額が差し引かれて所得税額の算出に影響するだけなので、超過分がそのまま返ってくるわけではありません。

また、年間の医療費の計算は、保険金や補助金などで補填された金額を差し引く必要があることにも要注意です。

例えば、治療費50万円の病気を治療して医療費を支払っていたとしても、生命保険金が50万円支払われていれば、保険金分を差し引いて実質は医療費の負担はなかったと解釈することになります。

ちなみに、医療費控除を受けるためには個人で確定申告をしなくてはいけません。年末調整では所得控除を受けられないので、覚えておきましょう。

☆鍼灸院や整骨院での施術は医療費控除の対象になる?☆

医療費控除は、鍼灸院や整骨院での施術がすべて対象となるわけではありません。施術によっては控除を受けられないこともあるので、どの施術が対象になるのかを事前に把握しておきましょう。

「医療費控除の対象になるケースとは」

医療費控除の対象になるのは、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師のいずれかが行った施術です。主に負傷原因がはっきりしているけがの治療などが該当します。

「医療費控除の対象にならないケースとは」

医療費控除のポイントは、「どんな目的で治療したか?」です。

まず、負傷がはっきりしている症状の施術であっても、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師のいずれかによる施術でなければ、医療費控除の対象にはなりません。民間の資格保有者による施術の場合は、医療費控除の対象外となるので注意しましょう。

そして、もう1点気を付けたいのが施術の目的です。施術の目的が疲れを癒すためや、慢性的な症状を緩和させるためだった場合は対象外となります。具体的には、以下の施術が医療費控除の対象外になるので覚えておきましょう。

・慢性的な肩こり、腰痛
・リラクゼーション
・健康維持
・疲労回復
・後遺症の緩和
・姿勢や骨盤などの矯正など

※少しお堅いですが国税庁の説明を載せておきますね。※

1 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
2 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
3 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価

4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)

5 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)
6 助産師による分べんの介助の対価
7 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
8 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
9 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの
(1) 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)
(2) 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用(3) 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)(注)

1 医療費の中には、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや前記(1)・(2)の費用に相当するものも含まれます。
2 おむつ代についての医療費控除を受けることが2年目以降である場合において、介護保険法の要介護認定を受けている一定の人は、市町村長等が交付する「おむつ使用の確認書」等を「おむつ使用証明書」に代えることができます。
10 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金
11 日本臓器移植ネット
ワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金
12 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金。
“国税庁ホームページより引用”

医療費控除の対象範囲
治療のために必要な経費として認められれば、施術費だけでなく医療用品の購入費や交通費も申請できます。

医療用品の購入費は、治療の一環で必要となる湿布やテーピング、コルセットなどが該当します。たまに治療に必要だからと、マッサージ器の購入費やサプリメント代を計上しようと考える人がいますが、これらは医療費控除の対象にはならないので注意しましょう。

また、治療を受けるためにかかった交通費も医療費控除の対象になります。交通費は原則バスや電車などの公共交通機関を利用する場合に限り、自家用車やタクシーなどを利用した交通費は対象になりません。

ただし、「バスが運行してなくて利用できなかった」などやむを得ない理由で公共交通機関が使えなかった場合は、タクシーでの交通費も対象になることがあります。

医療費控除の申告手続きについて

実際に医療費控除の申告手続きを行う方に向けて、必要書類や手続きの方法を解説していきます。

医療費控除の申告に必要な書類
医療費控除に必要な書類は以下の通りです。

・確定申告書
・医療費控除の明細書
・医療費通知書
・施術費等の領収書やレシート
・源泉徴収票

確定申告書と医療費控除の明細書は税務署で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードするかで入手できます。

医療費控除の明細書には施術を受けた人の氏名や病院の名称、支払った医療費の額などの記載項目がいくつかありますが、健康保険組合が発行した医療費通知書を添付すれば記載を一部簡略化することも可能です。

医療費控除の申告手続きの方法
前述したように、医療費控除の申告は確定申告にて行います。確定申告は2月中旬頃から3月中旬までの約1ヶ月間に行うのが基本で、医療費控除の申告だけであれば1月1日から可能です。確定申告に必要な書類が準備できたら、税務署に提出します。

以前は施術を受けたことを証明する領収書やレシートを添付したものを提出する必要がありましたが、2017年度からは医療費控除の明細書のみの提出で申告が可能になりました。

ただし、明細書等は5年間の保管義務があります。税務署の調査で不明点があったときには提出を求められる可能性があるため、しっかりと整理して大切に保管しておきましょう。

医療費控除を受ける際の4つのポイント!
条件を満たせば支払額の一部を控除してもらえる医療費控除は、控除を受ける際に押さえておきたいポイントがあります。鍼灸院や整骨院選びにも関係してくるので、ぜひ覚えておきましょう。

1.なぜ施術を受けるのかはっきりさせる
医療費控除は施術が治療目的なのか、それともリラクゼーション目的なのかによって対象となるかどうかが決まります。

負傷原因がはっきりしており、なおかつ慢性的ではない症状の場合は「治療目的で通う」と明確にして、その意思をしっかりと施術者に伝えてください。

また、医療費控除を受けるためには、症状改善の施術を行ってくれる整骨院や鍼灸院を選ぶことも重要なので事前にチェックしておきましょう。

2.健康保険の対象外でも医療費控除の対象になる
実は、健康保険外の自費施術を受けたときの費用であっても、医療費控除の対象になることがあります。そのポイントも、治療目的であるかどうかです。

治療目的を明確にするためには、医師による同意書または診断書が必要になるので、医療機関を受診して同意書等を発行してもらってください。

ほかにも、あん摩マッサージ指圧師等の国家資格を持つ者の施術であるかどうかが重要になります。その施術が対象になるかどうか分かりにくいときは、事前に確認しましょう。

3.領収書を必ずもらう
2017年分の確定申告からは領収書等の提出は不要になりましたが、1年間にかかった医療費の総額を算出するためにはレシートや領収書が欠かせません。正確な額を算出するためにもレシートや領収書は必ずもらい、5年間は大切に保管しておきましょう。

ちなみに、健康保険組合が発行した医療費通知書は、領収書の代わりにはなりません。

4.施術者の公的な資格を確認する
先述したとおり、医療費控除を受けるためにはあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師のいずれかの資格を持つ者の施術でなくてはいけません。

民間の資格保有者による施術は治療として認められないので、医療費控除を受けるなら施術者の資格を事前に確認して整骨院や鍼灸院を選びましょう。

医療費控除とは関係ありませんが当院は自賠責保険による施術も可能ですので、患者様への負担を最小限に抑えられます。病院・整形外科との併用ももちろんできるため、安心して施術を受けていただけるでしょう。

豊富な経験を持つ施術者も在籍していますのでお気軽にご相談ください。

まとめ

医療費控除はあん摩マッサージ指圧師等の国家資格者が行う施術で、なおかつ治療目的であれば医療費控除の対象になります。民間資格保有者が行う整体や、リラクゼーション目的での施術は対象外になるので注意しましょう。