コロナウイルスの影響で家籠りをするようになってもう1年になりますね。

あっという間でしたが、学生も社会人も以前は学校や職場で長い時間を過ごしていたのに自宅での時間が多くなり、勉強や仕事の作業場を急ごしらえで確保した方も多かったのではないでしょうか。

その結果、長時間の慣れない姿勢での作業によって腰痛や肩こりが悪化してしまう患者さんが当院にも多くいらっしゃいました。

今まで普通に食事をしていた椅子に座るのにも痛みが出てしまって家で過ごす時間が辛いと言う方へ、改めて身体に優しい姿勢とはどうやって作るのか考えていきましょう。

ヒトの身体は左右対称か

姿勢が悪いと言うのはどういうことなのか。

子どものころ「猫背は良くない」「足を組んで座らない」など自分にとってやりやすい姿勢を注意された覚えがある人も多いかと思います。

意識しないと出来ない姿勢より自然とやっている姿勢の方が自分の身体が求めている形なのでは?と思いませんか。

そもそもヒトの身体は筋肉の付き方、内臓の位置など人体構造上左右対称ではありません。

実際に内臓で一番大きい肝臓は右側にあり、そのことにより呼吸運動を行う横隔膜は肝臓に押し上げられる形で右側の方が高くなっています。呼吸をする為に毎日働く横隔膜の振動は骨盤の形に影響しているとされ、骨盤と繋がっている背骨や肩の高さも変わっていきます。

他にも利き手・利き足で使用回数が異なることから筋肉の付き方も違い、血流も左右平等にはなりません。

従って人体の状態としては骨盤の歪み、力の偏りがあるのは自然であるため、ただまっすぐに背筋を伸ばすことが正しい姿勢ではないと言えるでしょう。

自分の姿勢のチェックや姿勢の癖などを理解して、自分の身体構造にとっての正しい姿勢を見つけることが大切になります。

一般的には痛みを感じやすい姿勢、肩こりや腰痛を引き起こす可能性のある姿勢をとっている時どこにどのくらいの比重がかかっているのか、どういった改善方法があるのかを次の項目で話していきたいと思います。

頭の重さと首の負荷

姿勢の理想は足の底面を広く使い、底面に対し腰部、背骨の中心、首、頭頂部を点にして垂直な線で繋げられることですが、活動している限りそんな直立を保つことは不可能です。

特に肩こりや腰痛になりやすい人に多いのは、頭の重さを支える首への負担が大きいことです。

スマホやパソコン、勉強や読書と下を向いてやりたい作業はたくさんありますが、そのために頭を首の力だけで支えなければいけません。頭の重量は成人で体重のおよそ10パーセントとされており、長時間首にその負荷をかけ続けると首の筋肉が緊張してこわばり、いわゆる凝りの原因となってしまいます。

筋肉が凝ってしまうと痛みや血行不良を招き、特に首は脳から全身へ神経の伝達を行う為の大切な通路なので、肩こり腰痛などの症状のほか自律神経の乱れを引き起こし様々な体調不良に繋がる原因になります。

最近では前傾姿勢をとり続けた結果、頸椎(首の骨)自体が前のめりになってしまうストレートネックと呼ばれる姿勢の人が増えています。

本来頸椎は緩やかなS字を描くことで首の比重を分散させ、負荷を掛けないような形になっているのですが、それが伸び切ってしまい、前述したような症状を引き起こしやすい身体になってしまっています。

予防としてはスマホなどを使う際になるべく下を向かない様に目の位置まで本体を持ち上げて見ること・枕の高さを低くし、仰向けで寝ることなどが挙げられます。

仕事などで長時間どうしても下を向かなければならないと言う場合は、頭の重さを理解し、合間にストレッチを挟んだり、体勢を少しでも変えながら同じ位置に負荷がかからない様に意識して痛みの予防・改善を行いましょう。

人体のS字

首の話の際にあった、頸椎のS字は正確には背骨に当たる脊髄のS字の一部になります。

人体は上部の頸椎・腰部の腰椎で緩やかなカーブを描き、胸部に当たる脊髄の中央部では少し大きめに背中に向かって湾曲することにより、体重とそれにかかる重力をなるべく分散させることが出来るようになっています。

しかしながら同じ体制を長時間続けることで、この湾曲が乱れ、負荷を上手に分散できなくなると筋肉がこわばり自然に正常な姿勢に戻ることが出来なくなってしまいます。

大きく胸部が後ろへ曲がってしまったり、腰部が前へ曲がってしまっている状態をそれぞれ猫背・反り腰といい、腰痛に悩む多くの人に該当する姿勢です。

この姿勢の困ったところは、何かをしているからその姿勢になってしまうのではなく、自然と楽な姿勢をとろうとした時に猫背・反り腰になってしまうと言う事です。

何故その体制が楽になってしまうのかと言うと、上記にあった人体の元々の作りに基づく運動時の癖やけがの後遺症などによる骨盤の歪み・遺伝的な骨格、他に自宅や学校などで使用している机やいすの高さが合っていないため日常的に姿勢を崩しており、それが慢性化してしまっているなどが挙げられます。

猫背・反り腰の人はストレートネックにもなりやすく、全身の体調不良に繋がるほか、曲がった部分に肉が乗りやすくなるので見た目もいわゆる中肉中背と言われる体形になってしまいます。

骨を支える筋肉

これまで骨の話ばかりでしたが、姿勢は理想的な骨の形によって正せるのではなく、その骨の周りにある筋肉がいかに強いか・柔軟であるかが本当の重要ポイントです。

骨は筋肉により直立を保つことができて、筋肉の伸縮によって関節を曲げることを可能にしています。

筋肉に柔軟性があれば骨の動きもしなやかになり、滑らかな動きと上手な体重移動で一か所に負担をかけにくい身体を保つことができます。特に脊柱起立筋という背骨のS字を支える筋肉が低下すると、猫背・反り腰となり腰痛に悩まされるようになってしまいます。

日常生活で今までできていた体勢が辛くなってしまったのは骨が曲がってしまったのではなく、今まで支えることが出来ていた筋力が低下してしまったことが原因かもしれません。

外でランニングやスポーツが好きな方なら運動も喜んで出来てしまうかもしれませんが、運動嫌いな方はまずお家で出来るストレッチや簡単にできる筋トレなどで基礎的な筋力をつけていくことを習慣づけていきたいですね。

姿勢を正すこともいってみれば筋トレのひとつになるので、今自分はどんな姿勢でどこの筋肉を使っているなと言うのを意識して、身体全体を支えられる姿勢づくりを心掛けていきましょう。